全国保育団体合同研究集会2016年inしまね
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と き:2016年8月20日(土)~22日(月)
ところ:島根県・くにびきメッセ
概 要
全保連主催の「全国保育団体合同研究集会2016年in島根」が開催され、全国各地から4000人余りの保育者、保護者が参加しました。
第48回となる全国保育団体合同研究集会のテーマは「ひろげよう!平和へのねがい つなげよう 保育・子育ての輪」で、安倍政権によって戦争する国づくりが進められている情勢を反映したものとなっています。
実行委員長の渡邉保博さんが開会あいさつを行い、「子ども・子育て支援新制度が始まって1年あまり。保育の基準や保育施策を後退させる動きがすすむなか、『認可保育園を増やして』『「保育士の処遇の改善を」など保育への願いが渦巻いている。今回の集会で保育とは何か、何がよい保育なのかを学び、話し合い、明日からの保育に活かしていこう」と呼びかけました。
その後、フォーラムが行われました。まず大宮勇雄さん(福島大学教授)が「いま、乳児期に大切にしたい保育とは?」と題した報告を行いました。大宮さんは、「昨年4月から実施された子ども子育て支援新制度のもと、幼稚園や幼保連係型認定こども園では『幼児期の学校教育』がされ、保育所では『保育』が行われているとしている。これは、教育と保育をあたかも異質なもとして描き出している。保育が目指しているのは、子どもの幸せな日々を作りだすこと。つまり、子どもがもてる力を存分に発揮で友だちに認められ、支えられながら自分づくりをすることだ。そのためには、子どもの状態を見極め、可能性を豊かに見る保育士の専門性が問われる。学校教育のように決まりは守るべきものということを教え込み能力を伸ばすことが目的とされるが、協同生活の中で相手を認め、相手の気持ちに応える姿を育てるのが保育における教育だ」と保育は教育と切り離せるものではなく教育を包み込んださらに豊かな内容を含んでいるとしました。
次に、黒沢祐介さん(兵庫大学短期大学部)が「保育者同士の学び合い、共同で豊かな保育を」とのテーマで報告を行い、「子どもたちが幸せな日々をおくれる保育を進めるためには、それを支える保育者の仕事、その専門性が問われる。子どもたちは保護者や保育者、友だちに認められ、支えられながら自分づくりをしていく。同じように、大人も仲間の中で認められながら自分づくりをしていく。そもそも、保育観や専門性に唯一の正解というものはない。ほかの保育者と語り合い、時に課題を指摘され、時に自らの保育を認めてもらう。そして、ほかの保育者の保育観を知ることで形づくられる。専門性を高める学びは集団的なかかわりの中で育まれる。保育の質を高めるためには、つながり合いだけでなく、職場環境、労働条件も重要になる。また、保護者と共同で保育は営まれるため、保護者との連携も欠かせない」と述べました。
最後に、中西新太郎さん(横浜市立大学名誉教授)がまとめを行い、「『保育園落ちた』というブログが世論を動かし、保育所を増やし、保育労働者の処遇改善の必要性に多くの人が気付き始めている。毎日の子育て・保育の困難を軽減するためにも、問題を共に考え行動するネッワークづくりが必要。互いに励まし合い、心を通わせる場や機会を保育現場でも作りだしていこう。子育ての連帯は社会を豊かに平和にする。『子どもを産み育てるのは自己責任』という考えは、子育てを親だけに押し付けるもので生活全体をバラバラにするものだ。『他人の世話にはならない』と突っ張り合う社会よりも、たがいに力を借り合い支え合う社会の方がずっと豊かだ」と話しました。
翌日は、分科会が行われ、「こんな時代に生きる私たちの保育・子育て」では愛知県けやきの木保育園園長の平松知子さんを講師に、保育職場の処遇改善について学びました。
平松さんは、「子どもの成長に積極的に関わっていく保育。自分たちはなんてすばらしい仕事をしているんだろうと考えている保育士も少なくない。しかし、そうは思えない現状がある。新制度によって保育者の労働はより過酷なものとなっている。待機児童の解消と称しながら、保育園規制の緩和が行われている。鉄道高架下の保育園でもびっくりするが、最近では地下に保育園をつくろうとする動きもある。最近話題になった、毛布でグルグル巻きにされた子どもの事件。その子どもたちは人目の付かないところに隔離されるようにされていた。保育園で起きる虐待事件にはもちろん背景がある。困っても相談できない現場であったり、人手不足で多忙を極める日々、それでいて低賃金など。あたたかい保育はあたたかい職員集団から始まる。保育士の処遇改善はこどもの処遇に直結している」と述べました。
保育と教育は切り離せるものではありません。保育でいう教育とは、子どもがその人らしさを全面発揮しながらも周囲との関わりを学んでいくことをサポートすることです。そのため、保育士の専門性が非常に重要です。一見すると子どもたちと遊んでいるだけに見える保育士ですが、ただ遊んでいるだけではなくプロとして子どもの発達過程を見極めています。今政府によって行われているのは、保育士の専門性を度外視した規制緩和です。このままいけば、質の高い保育を受けたければそれだけ金銭面の負担が増し、貧困層は質の低い保育しか受けることができない、最悪の場合保育を利用できないことになりかねません。労働組合としても保育問題を今後もとりくんでいきます。