日付 2016年5月18日
と き:2016年5月16日(月)19:00~
ところ:岡山市勤労者福祉センター
概 要
現在、日本の労働者の4割が非正規労働者とされ、年収200万円以下のワーキングプアは1100万人を超えています。かつては一億総中流と言われた日本ですが、確実に貧困と格差は拡大しています。こうした、状況の中安倍政権は集団的自衛権行使容認、戦争法の強行採決を行い、日本でも徴兵制が復活するのではないかと危険視する声が上がっています。日本では、直接的な徴兵制はありませんが、経済的な理由から自衛隊を志望する人たちも増えています。戦争法の成立で日本はどうなるのか。今回、日本平和委員会から布施祐仁さんを招いてお話を伺いました。
講師紹介を行う、内田青年部部長
布施さんは、「自衛隊も誰でもいいから入隊してほしいとは思っていない。募集の目的は質の高い人材の確保にある。戦争法の成立によって徴兵制になるのではないかとの不安が自衛隊内でも高まっている。これまで自衛隊は募集をしても人が集まっていない。統計では自主的志望者は24%で、広報活動に応じては48%を占めている。一般的に、自衛隊に応募する場合、警察、消防と併願するものだ。何もしなければ自衛隊員は集まらない状況がある。自衛隊応募者数は年々低下しており、これにたいして防衛省は民間の雇用活力が上昇しているというが、内部資料を見ると集団的自衛権行使容認の影響が指摘されている。また、防衛省は10年以上前から少子化による人材不足を危惧していた。一方、安倍首相は自衛隊内部がどれだけ人材確保や広報活動に苦心しているかその実態は何もわかっていない」と自衛隊員数の減少の背景を説明。
そして、「組織的募集を強化する方策として学校や職安などの地方公共団体との協力体制が強化されている。これと同じようなことがアメリカではすでに行われており、アフガニスタン、イラク戦争の際には、経済的メリットの強調、学校へのアクセスが行われた。貧困や各家庭の経済的背景を利用して安定的に兵士を放銃しようとする目的がある」とアメリカの状況を解説し、「戦争法によって日本でも同じことが行われるのではないと考えられる。防衛省内部でも、戦後の若い世代に愛国心を教え込み、防衛意識を高めることは無理。むしろ経済的メリットを強調すべきとの分析がある。事実、自衛隊の志望者は貧しい地域に偏っている。そこで、自衛隊はインターンシップ・プログラムをつくり、民間企業の企業研修を請け負うことや、若手の漫画家に対して基地の見学などを行っている」と自衛隊もアメリカに近づきつつあることを訴えました。
戦争法によって戦死者が出るような事態になれば、いくら安倍政権といえども隠し切れません。布施さんは、「これまでは専守防衛だった自衛隊が戦争法で根底から変わろうとしている。自衛隊の中央即応集団(CRF) 箱芳文陸幕長は『本派遣の意義は、国益擁護に直結した初の統合任務部隊による国際活動であり、陸自全般の国際活動能力の向上と、他国駐留軍との関係強化が望める』と述べている。自衛隊の目的がいつの間にか海外における国家目的と国益追求、戦略的利益へと変わっている。既に日本政府はジプチにある自衛隊の駐留基地を恒久化しようとしている。経済的利益のためなら多少の犠牲は止むを得ないという考えが根底にはある。そのため、安倍政権は愛国教育に加え国防・安全保障問題までもを教育に盛り込もうとしている」と話しました。最後に、「経済的徴兵制とは戦争リスクを貧困層に押し付けるもので、自衛隊の海外進出を後押しするものだ。背景にあるのが、大企業の経済利益追求があり、そのために戦争で人が死んでも構わないというのは決して許すことはできない」と訴えました。
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と き:2016年5月15日(日)10:00~
ところ:おかやま西川原プラザ
概 要
おかやま教育文化センターが中心となり5回目となる「子育て・教育のつどい」が開催されました。県内各地から200人の参加があり、会場は熱気に溢れていました。
開会あいさつを行った実行委員長の田中博さんは、「集会をはじめて4年が経過した。私たちは岡山の子どもたちの状態を知り、改善のために討論することを目的にしている。今年は『つながり』というテーマで開催する。参加者のみなさんで議論を深めてほしい」と語りました。
その後、基調報告が石井信行さんから行われ、「過度な競争主義教育によって本来の学ぶ喜びが失われている。就学前教育の面を見ても、規制緩和による企業参入、オプション制の導入で保育料の額で保育サービスが変わること。侵略戦争を肯定する歴史教科者の採用など個人の尊厳をないがしろにするあらゆる策動がある。子どもたちの輝きをもっと素晴らしいものにするためには、憲法にあるように個性を持った一人ひとりを大切にすることだ。こうした動きに異議を唱えることこそが子どもたちの輝きをもっと素晴らしいものにしていくに違いない。子どもの幸せを求めて、県下各地でとりくまれている、活動を交流しながら、その輪を大きく広げるアイディアを紡ぎ出そう」と述べました。
基調報告終了後、土井隆義さん(筑波大学)による記念講演が行われました。土井さんはまず、「世界の誰かとつながりたいと思うと、6人を経由すると目的人物とつながることができるとの研究結果がある。しかし、今はSNSを利用することで誰とでもつながることができる時代だ」と話し、「いま若い人たちの生活満足度は上がっている。だが、これは経済的豊かさゆえではない。その背景を調べると、人間関係で満足度を感じていることが明らかになった。その反面、人間関係に悩み、不安を感じる人が増えている。子どもたちの傾向としては『友だち関係』を何より大切にする。親たちまでも、人間関係を大切にすることを期待している。その一方で、友だちができない自分はダメなんだと思う子供も増えている。友だち関係が良好なら学校生活に満足を感じることができるが、友だち関係がうまくいかず、不登校・引きこもりになる子供が増えている。子どもの世界では友だちの多さで価値が決められる様な傾向があるが、友だちが多いこと少ない子の差は大きくなっている。それは人間関係の流動化が進んでいるからだ」と現代の子どもたちをとりまく状況を分析。そして、「人間関係の流動化が進んでいるということは、不本意な人間関係を構築する必要はないということ。これまではクラスメイトなど学校制度によって強制的に関係を持つことが強いられていたが、制度的要素がなくなるということは友だち関係を保障する共通の枠組みがなくなったということでもある。つまり、友だちであることの根拠が不明確になっている。現代の子どもは事あるごとに『自分たちはドモダチだよね』と確認し合わないと不安なのだ」としました。
「自由が拡大しているのになぜ現代の子どもたちは好きにしないのか。現代の日本人の意識は伝統から脱伝統へと変化している。人によって価値観も多様化しているため、人生の羅針盤と言われるようなものはなくなった。これでは自分が正のかどうかわからない。そのため、他者の評価によって自己ナビゲーションするようになり、結果として価値観の一元化が行われている。今の若者にとって理想は自由よりも他者からの承認で、生きる意味よりも生きる基盤を考えている。見られていないかもしれないという存在論的な不安がある」と若者の価値観を分析しました。
最後に、「現代では世代間での差異が縮小しており、親と子供の価値観はほぼ共通のものとなっている。仮に、差異が表面化すれば衝突するかもしれないという関係リスクを促進することになる。そこで、自分はこういうキャラだと自己を固定化することで、個性を削除する工夫をしている。そして、若者の幸福感と諦観はつながっている。個性が目立たないということは、比較対象が少なくなるということでもあり、生活圏が内閉化している。こうした若者に対してどうしたらいいのか。それはやはり、内に閉じこもった状態から外に開いた状態へと変えていくことだ。そのためには、教師や親が外の世界を見せてあげることが大切だ」としました。
講演終了後はテーマごとに分科会が行われ、集会は幕を閉じました。
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