連想分類語 山内道雄海士町長
第10回全国地域人権問題研究集会が島根県松江市で開催され、全国から700人、岡山県から110人が参加しました。
石見神楽
オープニングでは石見神楽の演舞が参加者の心をとらえ、神の国とされる出雲や歴史的にも古い街並みが保存されている松江市のイメージを膨らませるに充分な催しに会場は大いに盛り上がりました。主催者を代表して丹波正史全国地域人権運動議長の挨拶に続き、県知事や松江市長の代理の方が挨拶をされました。新井直樹全国人県連事務局長が「第10回島根県集会の課題と地域人権運動の提起」として基調報告を行いました。
丹波正史全国地域人権運動議長
新井直樹全国人県連事務局長
講演は井上英夫・元金沢大学教授が「憲法を豊かに―住み続ける権利としての社会保障・生活保障―」をテーマに、「国民の権利として社会保障が国民に理解されていない。国がその責任をごまかし、国民寒河の責任にすり替えている。生活保護の保障は国の責任。生まれたところに住み続けるのは権利であり、その実現のために地域が闘いの場になっている」と社会保障制度の権利を身近な問題として説明しました。
井上英夫・元金沢大学教授
2つの講演では、島根県隠岐郡海士町の山内道雄町長が「自立・挑戦・交流―人と自然が輝き続ける―」と題して、島の活性化と合併せずに産業を興し、人口増につなげた経験を話しました。山内町長は「因習に支えられた選挙で新参者の自分が選挙で勝てた背景には、住民の町を変えたいという希望があったからだ。町長になって、職員には自分は社長で職員は社員だ。仕事は住民にサービスを提供する総合商社だ。町に産業を興し、その財源で住民サービスと仕事を増やし、教育で優秀な人材を育てれば、必ず町は元気になると信じて町政をになってきた。大変だったのは小泉政権の三位一体改革で交付税を減らされた時だ。町長の給与を30%削った。すると職員が自分たちの減らすと言ってくれた。今では職員の給与削減を15%から5%に戻しているが、減らした分は子育てに回している。役場が変われば住民も変わるもので危機意識を共有して、町興しの取り組みは島民の運動になった。さざえカレー、岩ガキ春香、海士乃塩、隠岐牛などのブランド化に成功した。CASという冷凍保存技術を使った魚介類は東京や外国でも好評だ。仕事があれば若い人も来る。賃金が安くても生きがいを求めている。今では人口増加率全国7位の自治体となった。異質なものを取り入れるグローバルな考え方と魅力ある街づくりを進めている。職員も変わってきた。移住者のためにハードルを下げ、遅い時間帯でも丁寧に対応できるようになった。安い家賃の住宅も建設している。人口も増え、今では高校も全学年2クラスになった。地元でオープンスクールをやると100人が来た。近所を大切に一人ひとりが主人公の町づくりが大切だ。国がやらないなら自治体がやるしかない。それは国のいう自立・自助・共助ではなく小さな町が生き残る作戦であり、町長は住民の命と暮らしを守る責任がある」と、自らの実践と自立する町づくりに挑戦した日々を熱く語りました。
山内道雄町長(島根県隠岐郡海士町)
2日目は5つの分科会に分かれて助言者の話を参考に報告と討論が行われました。第3分科会では「現場がつくる新しい社会福祉」をテーマに3人の報告がありました。地域の実践として孤立しない高齢者住宅の取り組み、トータルな介護事業経験、ケアマネージャーが医師とのコミュニケーションを工夫しながら利用者の不安解消に努めている経験などが話されました。
石倉康次教授(立命館大学)
立命館大学の石倉康次教授は「介護制度が人を支える制度になっていない。現場が考え、問題にぶち当たって解決するしかない。海士町のように自治体が率先して取り組む場合もあるが、現実は甘くない。そもそも何のために福祉があるのか?それは戦争を起こす原因を取り除くためだ。専制と圧政に苦しむ民の最後の手段としての反逆を防ぐのが福祉だが、現実の政府はそれを怠っている。政府は今後、病院での看取りもなくすると言っている。病院と介護施設の統合で患者のスムーズな移行を可能にしようとしている。サービス付きの高齢者住宅はお金持ちしか入れない。サービスを良くするとお金が掛かるので無資格者や外国人労働者の導入を考えている。看護の要支援はずしも政府は地域任せで何もする気がない。我々も国の主権者として国に改善を要求していく必要がある。介護殺人をなくする方法など、地域からの実践が求められている。現場からつくる新しい社会福祉はそういうことではないか?」と問題提起を行いました。
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