カテゴリ 自治体問題研究所
とき:2017年10月30日(月)18時30分~
ところ:勤労者福祉センター4階会議室
10月30日(月)、自治体問題研究所の公開講座があり、元林原株式会社の専務で林原靖さんのお話を聞きました。林原と言えば、岡山市民にとって系列会社にカバヤがあり、インターフェロンやトレハースで有名な企業でした。岡山駅前に広大な林原所有の駐車がありました。その会社は2011年2月に破綻し、跡地には突如、イオンモールが立ち、駅前の風貌は大きく変わりました。何故?林原が倒産したのか?未だに謎とされ、その裏には陰謀説さえあります。当事者の林原靖さんからお話を聞く機会を得たことは、その謎に迫りたいという好奇心と同時に、当時は私たちが接することができない岡山の財界の重鎮でもあった人の話を聞けるのは労働運動をするものにとってまたとない機会と楽しみながら参加しました。会場には50人以上が訪れました。
林原氏はこれまでに2冊の本を書いています。「破綻」と「背信」です。これを主題にしながら、今回の講演のテーマは「破綻と背信から希望に向けて」とされました。
最初に元県議会議員の武田英夫さんから林原靖さんの紹介がされました。武田さんは「本が出ているので知っている人も多くいるが、元地方議会にいたものとして林原の問題は寝耳に水であり、街づくりの観点から議会で議論もされなかったことが疑問の出発点だった。うどんの会があり、そこで林原さんとの出会いがあった。当時、NHKのハゲタカファンドが放映され、金融庁、銀行、弁護士などが絡んで良質で文化を大切にしてきた会社が潰される社会が問題視された。林原もそんなハゲタカの餌食にされた。ここに企業と街づくり、銀行などの関係が見えてくる。私たちの運動にとって重要な視点だ」と話しました。
林原さんは「会社は破綻したが、当時、なぜ?と疑問が渦巻いて整理もできなかった。あんな会社潰れて当然、時代遅れの経営、放漫経営などマスコミ報道は過熱して、事業にもとづかない批判と誹謗中傷によって、経営は破綻に追い込まれた。しかし、破綻後の借金返済は100%であり、当時も利益は順調にあり、年間のキャッシュフロー(企業活動や 財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る 資金の流れのこと)も100億円と優良企業だった。技術力も評価され、銀行にとっては成長企業の芽を摘んだことになる。企業と街・銀行の関係は自治体の発展にとって大きい。将来を見据えた企業の育成と街づくりを総合的に考える賢さが銀行になかったと思う」と会社の評価をした上で、街全体としての成長発展の観点から今でも業界や研究会で講演を続けていると話されました。
その上で、「倒産には双方言い分があり、悪く言うつもりはない。今では勉強を重ね、社会の発展を考えるようになった。アベノミクス経済で銀行はお金を貸さないようになった。銀行が考えるのは常に担保であり、企業の総合的な価値を見抜く力を持ってほしい。岡山市もイオンができたが、利益は県外に流出する。県内企業の参入は多くない。雇用も限られ、逆に地元の商店が潰れる悪循環に陥っていないか?考える必要がある。どんな商店でも企業価値は必ずある」と話しました。
林原さんはそうした観点から3つ街発展の原則を提起しました。①世界の中でここにしかないコンセプト、②最高のものを地域と一体となってつくる、育てる、③時間とともに成長する街並み、世界から人が集まる魅力だとしました。
さらに、「大切なことを学んだ。共感することで想像力が深まった。人間進歩の行きつくところは弱い立場に立つことだと確信した。人間不信に陥らなかったことで学び、視野が開けた。男性も女性が化粧をして恥ずかしくない生き方をしようとしていることに学び、自分を生き方を磨き精神を高める必要があると思っている。今は希望をもって社会に貢献できる生き方をしていることに確信がある」と未来を見据えました。
講演後に質問された方が元林原の職員であり、「45歳で会社が破綻して、それから薬剤師になった。苦労したが会社で育ててもらった財産が生きている。林原さんが希望をもって生きていることに感動した」と感想を出されました。
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とき:2017年8月21日(月)18時30分~
ところ:勤労者福祉センター4階会議室
8月21日(月)、自治体問題研究所は小松泰信(岡山大学院環境生命科学研究所)さんを講師に迎え恒例の研究会を開きました。テーマは「農業の現状と安倍政治」です。参加者23名でした。
冒頭に小松さんは「自分は安倍首相が嫌いだが、彼のおかげで皆さんにお会いすることができた。長崎県で生まれ、京都大学院で学び長崎県の農協に勤務した。1989年に教員をしたのを契機に1997年岡大農学部に入った」と自己紹介しました。
農業を取り巻く環境について、新聞赤旗の記事などを紹介しながら、「農業は長期低迷の食料自給率だ」として具体的な話しに入りました。「日本の食料自給率は38%であり、これは人間一日の必要摂取量2500カロリーから見ると小学生くらいの量だ。しかも農業従事者は47%超が70才であり国の責任は大きい。農協を悪く言う人もいる。確かに100%の組織じゃないがそんなに悪くはない。国の経済発展の法則から考えれば、農業が衰退していくのは当たり前。農業などの第1次産業で蓄えた資本力が第2次、3次に移されるのは法則であり、農水産省は強い農業などというができるはずがない。だから国の支援が必要。アメリカやヨーロッパでは当たり前のことだ。小規模の販売農家は10年間で32%も減り、基幹農業従事者は175万になった。安倍首相のいう儲かる農業はごく一部の法人・企業だけで、それだけでは食料自給率を向上させ、持続可能な農業・農村を実現することはできない」と話しました。そこで小松さんは農村社会観が展開して、「農村は基層領域と表層領域がある。表層領域には食料の販売機能であり、経営や取引・運営と言ったもので農業経営などがある。農業が分散すると弱くなる。団結・協力しないとやれない。他方、基層領域は集落組織であり地域の保全管理、コミュニティーであり、伝統文化や防災、神事などがある。これが大事だ。これらは着土と言って土地に起きることを意味する」と説明しました。
さらにグローバル企業について。「は世界を市場にしてフロンティアと言えば聞こえはいいが、市場を探し食い漁っている。世界の市場は危険なところが多いが日本の農業市場は彼らにとっておいしい市場。JA共済は300兆円、JAバンクには100兆円が眠っている。彼らはこれを狙っている。農業競争力強化支援法の廃止、種子法の廃止で、農業者の努力を促し、輸出できる農業などと言っている。そんなことができるはずがない。むしろこれまで開発・品種改良に向けてきた技術さえ外国に提供しようとする政府のやり方は異常。安い農産物をつくろうとすれば大量の農薬が散布される。手間暇かけ安全な農産物をつくろうとすると高くなる。消費者に対しても理由を説明すべきであり、農業こそ岩盤規制が必要だ。自分は農業の使命を考えるとキーワードは生命の連鎖性だと考える。超長期の産業が農業であり、成長産業から選別すべきだ。農業への支援はバラマキというがそうではない。あまねく保障という言葉がある。選択と集中など政府は聞こえのいい言葉で簡単に言うが選ばれなかった人はどうなるのか?食料主権ともいうが市場にこだわらない。農業の基礎代謝を守ることに重きを置くべく」と強調しました。
70分間のお話でしたが、熱弁に圧倒され、飽きさせない口調に引き込まれました。最近注目される岡大の先生ですが、退官まで7カ月だそうです。
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