日付 2014年2月22日
とき:2014年2月11日(火・祝日)13時30分~
ところ:岡山大学文法経講義棟 10番講義室
第46回「建国記念の日」を考える県民のつどいが2月11日、岡山大学文法経講義棟で開かれました。参加者は約70人、「神々の国に赴任した学芸員」というテーマで森田喜久男さん(島根県立古代出雲歴史博物館専門学芸員)が講演を行いました。
建国記念の日は戦前の紀元節を復活させたもので、明治政府が神話に基づき、この日を初代天皇「神武」が即位した日として、天皇中心主義と軍国主義、侵略戦争推進に利用しました。歴史的には何の根拠もない事が分かっていますが、1966年に自民党政府が国民の反対を押し切って復活させたものです。前回の岡山集会でも「何の根拠もない」ことを歴史の事実から、今津勝紀(岡大文学部准教授)さんが「日本古代史研究の過去・現在・未来」と題して講演の中で解明しました。そもそも神武天皇は元々神話の世界に出てくる人であり、その天皇を万世一系と位置づけるのは無理があると名前由来の研究から紐解きました。
今回は、出雲歴史博物館の学芸員をされている森田喜久男さんが、「古事記や日本書紀が当時の政治思想の産物であることは言うまでもないが、そこには、時代を超えて現代に生きる我々に対して重要なメッセージを発信している」と、当時の人達の世界観を具体的に紹介し、「神話は、物事の始まりを語った物語」だと話しました。森田さんは、「例えばスサノヲとヤマタノオロチでは、スサノウという神がそもそもいかにして生まれたのか?ヤマタノオロチは山の精霊であり、その背中には杉の木が生えている。また。オオクニヌシ神の神名には偉大なる国主という意味で、国をつかさどる支配者という意味があるが、神の従者であった存在が何故神になったのか?そのプロセスの中に地域社会の慣習が浮かび上がる」などを具体例で紹介されました。
森田さんは、島根県教育委員会編『ふるさと読本 いずも神話』や古代出雲歴史博物館の神話シアターの映像制作に関わる中でいろいろなご苦労があったと聞きました。特にシアターの映像については台本の段階ではあまり問題点を指摘されなかったにもかかわらず、いざ映像化された段階でいろいろな「物言い」もつき困ったそうです。研究者としての感覚と行政の感覚とのずれ、さらには地域ナショナリズムとのあつれきに悩まされ、体重が激減した時期もあったとその辛さを吐露されました。そのような中で、市民と結びつき、『古事記』や『出雲国風土記』の神話を読み解説する中で、神話を活かしたまちづくりに関わりを持つようになり、神話研究の新しい方向性を見出すことができたと話されました。「神話と特定の宗教とを結びつける行政の動きに対しては注意しなくてはならない」と話された時はある種の決意のようなものを感じられました。「特定秘密保護法案が成立し、公務員の守秘義務に抵触している部分もありますが…」などと話しながら、ご自身が話しにくいことも率直に語られ、参加者は励まされる思いでした。「4月からは、自分自身の見解を行政に対して言える立場に」との話も添えられ、神話を正確に伝えようとする森田さんの決意のようなものを感じ取ることが出来ました。森田さんが今後も、語り部が語る村人達の「本源的神話」をたくさん発見していただくように期待したいと思います。
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